【精神科】自力で障害年金を請求するポイント【診断書】【遡及請求】

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前回の記事では、未成年のお子さんがメンタル面の不調で病院にかかる場合の、将来に向けて備えるべきポイントについて解説しました。

この記事では、いよいよ障害年金を請求する方へ向けて、自力申請で審査を通すコツをお伝えします。

その前に、そもそもどのような人が精神疾患で障害年金を受給できるかというと…

  • がっつり継続的に働くことができない

  • 1人暮らしができない(家事などがままならない)

  • 外出することが難しい

  • 対人関係が不安定

このような状況にある場合、障害年金(基礎年金2級あるいは1級)を受給できる可能性があります。
*ちなみに厚生年金への加入期間がある方は、これより障害の程度が軽くても、厚生年金3級を受給できる可能性があります。(3級は厚生年金のみに存在)
精神障害者保健福祉手帳を持っていなくてもOKです。

障害年金の申請は、お金を払えば社労士(社会保険労務士)が代行してくれます。
社労士に依頼した方が審査が通る確率は上がるかもしれませんが、費用がかかってしまうのが難点です。
障害年金申請は、診断書作成料(自費)などただでさえお金がかかってしまうので、なるべく節約して申請したいところですよね。

障害年金は、よほどややこしい事情がない限りは、自力で申請可能です。
必要なのはご本人あるいはご家族さんのガッツです。
それから、自分のこれまでの経歴を年金事務所の職員さんにさらけ出すことになるので、少し勇気も必要です。

受給までには、書類の準備に3ヶ月、書類審査に3ヶ月、計半年はかかるとみていてください。
以下、申請の手順と審査に重要なポイントを順番に解説します。

1.主治医に相談する

まずは精神科の主治医に、年金請求をしたい旨を申し出ましょう。
この段階では、すぐに診断書を作成してもらう必要はありません。(診断書は有効期限が3ヶ月しかないため)
また後日診断書の作成をお願いするので、その時はよろしくお願いします、とだけ伝えます。

2.簡単な経歴メモを作成する

時系列で、病歴・通院歴・職歴を簡単にまとめた簡単なメモを作成します。
いつ頃から症状(精神症状でも身体症状でもOK)が出始めたか、いつ初めて病院にかかったか、が特に重要です。
このメモは年金相談センターの方に見せるものなので、精神的にしんどいことが伝わるように、「できたこと」よりも「難しかったこと」「困ったこと」を重点的に書くようにしましょう。
短期間のバイト経験などは、わざわざ書かなくても構いません。

3.年金事務所へ初回相談に行く

作成したメモを持って、年金事務所あるいは街角の年金相談センターへ、初回相談へ行きます。事前予約をして行くことをおすすめします。予約は以下のURLにある電話窓口でできます。

初回相談は、30分~2時間ほどかかります。
準備が必要な書類(診断書など)を教えてもらい、年金請求書などの必要書類を受け取ります。
申請時にそろえなければならない書類は一覧リストが用意されているので、職員さんに訊いてみて、そのリストで必要な書類にチェックをつけてもらいましょう。

年金相談は、電話では受け付けておらず、来所が必要です。
場合によっては、後述する病院への問い合わせと並行して、2回、3回と相談へ行かなければならない場合もあります。

4.病歴・就労状況申立書を作成する

診断書を作成してもらう前に、まずは自分で病歴・就労状況申立書を作成します。
この申立書をもとに診断書を書いてもらった方が、より事実に基づいた診断書を作成してもらえるためです。

申立書は、以下の厚労省のサイトからExcel、PDFのダウンロードができます。

Excelで書く方は、ダウンロードして作成しましょう。A4用紙に印刷でOKです。
手書きで書く方は、A4サイズに手書きするのは大変なので、年金相談センターでもらえる大きな紙の申立書に書くことをおすすめします。

申立書は大雑把には書かず、病院ごとに期間を区切って記述します。必要に応じて続紙も利用します。
ある病院の通院期間が明確にわからず、病院に問い合わせても教えてもらえなかった場合は、「2020年6月頃日」としても構いません。

年金の審査員は、「この人はずっとしんどかったり困ったりしながら生活してきたのか」を見ます。
なるべく、余計な内容はそぎ落とし、日々のしんどさがきちんと伝わる申立書を作成しましょう。

日常生活状況の書き方

申立書では、「身体症状・精神症状」と「生活状況」を明確に記述します。
申立書の裏面には、「日常生活状況」という項目があります。着替え、食事、入浴、買い物、散歩、といった各項目がどれくらいできるか、チェックマークをつけていきます。チェックの際は、1人暮らしを想定します。

この「日常生活状況」の項目を参考にしながら、申立書の自由記述欄を書くことをおすすめします。
たとえば「抑うつが強く入浴が毎日できなかった」「1日中パジャマで過ごす日が多かった」「掃除ができず部屋にゴミが散乱していた」「人が怖く、散歩もできなかった」といった内容です。
裏面のチェックマークと整合性がとれるように記述します。

1人暮らしの期間がある場合は、審査員に「1人暮らしができるなら障害は軽いのではないか」と判断されてしまう可能性があります。
朝起きられずゴミ出しができなかった、皿洗いができなかった、布団でないところで寝ることがあった、家族や友人が家事を助けてくれた、といったエピソードがあれば記述しましょう。

症状の書き方

症状は、できればエピソードも添えて記述しましょう。
「感情の起伏が激しく、対人トラブルが絶えなかった」「友人に強く依存してトラブルになった」「アルバイトを試みたが、抑うつや不安が強まり続けられなかった」「気分がいい時に散財してしまったことがある」「抑うつが強く、布団から出られない日が月に7日ほどあった」「死にたい思いが強く、自傷行為やODをした」といったエピソードがあれば、それらを簡潔に記述します。
トラブルの詳細や、その時の心境まで詳しく書く必要はありません。
審査員に「確かにこの人は生活が大変そうだな」と伝わるような文章を書くことが大切です。

枠に余裕があれば「病院に通った頻度」「受けた治療」も記述するとよいでしょう。
「気分の波が激しく、家族に勧められて精神科を受診した」「月1回通院し、カウンセリングでは将来への不安などについて相談して泣くこともあった」「抑うつのために通院意欲がなくなり、一旦通院をやめてしまった」といった内容です。

申立書は、できれば家族や友人などに見てもらい、加筆する、余計な部分を削るなど、適宜修正をしましょう。

5.各病院に問い合わせ書類を作成してもらう

申立書作成と並行して、今までかかった病院に電話などで問い合わせをします。
問い合わせの際は、「書類作成にどれくらいの時間がかかるか」を確認しましょう。
原則「初診証明→現況の診断書→障害認定日の診断書」がスムーズですが、場合によっては時間のかかる病院に早めに依頼をして作成してもらう方がよいです。

初診証明の作成を依頼する

初めてかかった病院(精神科・内科・小児科など)には、「受診状況等証明書」(通称:初診証明)を作成してもらえるかを問い合わせます。
この時、初診日と最後に通院した日も訊いてみましょう。申立書の作成に役立ちます。

遠方の場合、郵送・振込等で対応してくれる病院もあります。
証明書の作成料は自費のため病院によって異なります(2000~5000円程度)。

初診の病院が証明書を作成してくれなかったり、すでに閉院している場合は、一般に2番目に行った病院の証明書が必要となります。
このあたりはケースバイケースなので、年金相談センターの方に確認をしましょう。

書類自体はA41枚の簡単なものなので、特に補助資料をつける必要はありません。

現況の診断書の作成を依頼する

現在通っている精神科に、現況の診断書の作成を依頼します。(手書きで作成する先生も、パソコンで作成する先生もいます)
医師が作成する診断書は、病歴・就労状況申立書よりも重視される、非常に重要な書類です。
作成を依頼する際、病歴・就労状況申立書のコピーを補助資料としてつけることをおすすめします。

診断書では、(1)適切な食事(2)身辺の清潔保持(3)金銭管理と買い物、といった7項目について医師がチェックマークをつけます。
7項目の詳細は以下のサイトをご覧ください。

余力があれば、「現在の生活状況について(単身生活を想定)」という参考資料を自分で作成します。1人暮らしの場合、7項目がどのような状態になるかを、箇条書きでいいので簡単に記述します。
また、基礎年金を申請する場合は「基礎年金2級申請予定」というように書類に明記しておくのもよいでしょう。

これらの補助資料をつけることで、主治医に、より事実に基づいた診断書を作成してもらうことができます。

現況の診断書を受け取ったら、その場で不備がないかを確認します。
病歴・就労状況申立書と齟齬がないかもチェックし、必要に応じて申立書を修正したり、診断書の修正をお願いしたりしましょう。

現況の診断書の有効期限は3ヶ月です。有効期限が切れてしまうとまた自費で診断書を再作成してもらうことになってしまいますので、ここから、少しスピードアップして申請準備を進めましょう!

障害認定日の診断書の作成を依頼する(遡及請求)

障害年金は、5年分さかのぼって支給してもらうことができます。基礎年金2級の場合は、5年分で約400万円です。
「5年分は要らない、現在以降の年金さえもらえればOK(事後重症請求)」という方は、この項目は読み飛ばしてください。

5年分を遡及請求するとなると、「障害認定日の診断書」が別途必要になります。この「障害認定日」(障害年金を受給できるほどの障害に達したと認定される日)は、初診タイミングによって変わります。
障害年金は20歳以降が受給できる制度なので、20歳を境に手続きが異なってきます。

①初診日が、18歳6ヶ月より前(例:小中高校生の時に初診)
「20歳の誕生日の前日」が障害認定日です。
必要な診断書は、「20歳の誕生日の前後3ヶ月のいずれかの日付のもの」です。
20歳頃に通っていた病院があれば、そこに診断書の作成を依頼します。
20歳頃に病院に通っていなければ、遡及請求はできません。

②初診日が、18歳6ヶ月~20歳の間(例:高校卒業後すぐに受診)
「初診日から1年6ヶ月経過した日」が障害認定日です。20歳~21歳6ヶ月頃になりますね。
その時期に通っていた病院に、「初診日から1年6ヶ月経過した日以後、3ヶ月以内の診断書」の作成を依頼します。
該当時期に病院に通っていなければ、遡及請求はできません。

③初診日が、20歳以降
②と同様、「初診日から1年6ヵ月経過した日」が障害認定日です。

①②③いずれにしても、診断書の作成は、補助資料をつけて依頼することをおすすめします。
お医者さんに過去のカルテと記憶を振り返って診断書を書いてもらうので、補助資料をつけることで、より事実に基づいた診断書を書いてもらえる可能性が高まります。

補助資料は「現況の診断書のコピー」「病歴・就労状況申立書のコピー」「該当時期の生活について(単身生活を想定)」の3点があれば十分です。
その他、現住所や電話番号を明記した依頼文も渡すと親切ですね。

ちなみに「初診の病院」「現在通院している病院」「障害認定日に通院していた病院」のほかにも通った病院があったとしても、そこに何かの書類をつくってもらう必要はありません。申立書に通院時期さえ書けばOKです。

6.障害年金を申請する

診断書等の準備が整ったら、いよいよ申請です。相談予約を入れ、持参物に抜けがないかを確認しましょう。書類に加え、マイナンバーカード、精神障害者保健福祉手帳、年金手帳などなど。

年金申請書はあらかじめ記入して持参するとスムーズですが、わからない部分は記入せず空けておきましょう。特に「これまで加入してきた基礎・厚生年金の記録」を書く欄は、未記入のままで、年金相談センターの方に教えてもらった方がよいです。

書類に不備がなければ、申請を受け付けてもらえます。受付控え等を受け取り、帰りましょう。
審査結果は郵送で通知されます。
お疲れさまでした!

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